【イントロ】
家づくりは、まるでパズルのよう。間取り、収納、キッチン動線……どこに何を置くか、何をどう使うかを組み合わせて、理想の形を作り上げます。
でもそのパズル、“電源”が最後の最後に置き去りにされていませんか？
どんなにデザインや機能にこだわっても、たったひとつ「電源の配置」がズレるだけで、便利なはずの家がストレスの多い空間へと変わってしまうのです。
【エピソード】
新築から4ヶ月。
広いリビングに、北欧風の家具。間接照明がやさしく灯るはずの空間に、ぐねぐねと伸びた延長コードが3本。
その家に暮らすのは、共働き夫婦と子ども2人の4人家族。設計の打ち合わせ時、「コンセントの数は多めにしたから大丈夫だと思ってた」。でも──「どこに必要か」を考えていなかった。
テレビ裏の配線が入り組み、ロボット掃除機の充電場所を確保できず、ソファ横ではスマホの取り合い。洗面所の床に転がるコード付きの除湿機は、出入りのたびにつまずく原因に。
奥さまがぽつりと言った。
「毎日、“あれ？ここに電源なかったっけ？”って思うんです」
【分析】
なぜ、こんなに多くの家庭で同じことが起こるのか？
答えは簡単です。
暮らしを“過去”で考えているから。
電源設計は、「今ある家電」だけを基準にすると必ずズレが出ます。ここ数年で、暮らしに関わる電気機器はこう変わりました：
- 自動充電する掃除機
- 音声操作のスマート家電
- 複数の充電デバイス（スマホ、タブレット、ワイヤレスイヤホン）
- 小型ヒーター、空気清浄機、加湿器…部屋ごとに1台が当たり前に
そしてそれぞれが、「ここに置きたい」という場所を持っています。家電が「場所を選ぶ」時代に入った今、暮らしの流れに合わせて電源を考えなければいけません。
【ありがちな“電源の穴”】
家の中で「ここに欲しかった！」が集中する場所には共通点があります：
| 場所 | なぜ必要？ |
| ソファ横 | スマホ・タブレット・ゲーム機の充電 |
| キッチン足元 | ホットプレート・炊飯器・IHコンロなど一時的家電 |
| 洗面台の上部 | 冬場のヒーターや夏の除湿機 |
| ベッドサイド | スマホ＋スタンドライト＋加湿器 |
| 階段下収納 | 掃除機や工具の充電スポット |
そして見落とされがちなのが、「照明スイッチの位置」。
- 廊下の電気を消すには奥まで歩かないといけない
- キッチンの手元を消したくてもリビングまで行かないと無理
- 寝る前、玄関の照明がリビング側でしか操作できない
こうした**“ちょっとした面倒”が、確実に積もっていく**のです。
【発見】「見る」のではなく「動く」でわかること
図面は平面。でも、人の生活は立体的です。だからこそ、展示場やモデルハウスに行ったら「見ないで、動いてください」。
以下のような「仮の暮らし方」を体験することで、必要な電源位置が自然と見えてきます：
- ソファに座ってスマホを充電したい→電源は右？左？床？
- ダイニングに座ってホットプレートを使う→足元にある？
- 洗濯物を干す→ベランダにコンセントはある？
- 夜、子ども部屋の電気をつけて消す→誰が操作する？
これらは図面上では見えない“生活動線と使用シーン”。五感を使って歩いてみることで、電源が「あるか・ないか」より、「使えるか・使いにくいか」の本質に気づけます。
【実践ポイント】電源計画・5つのチェックリスト
① 暮らしの1日をシミュレーションする
起床から就寝までの行動を書き出し、「何をどこで使うか」を洗い出す。
② 今と将来の家電リストを作る
今ある家電だけでなく、将来欲しくなりそうな家電も考慮する。
③ モデルハウスを“使うつもり”で歩く
スマホやメモを持って、「ここで何をするか」を想像しながら移動。
④ 部屋ごとの“電源シーン”を分けて考える
リビング・寝室・洗面所・子ども部屋など、それぞれの使い方で検討。
⑤ 設計担当に「電源用途一覧」を伝える
「この場所でこれを使いたい」を一覧化して、プロとすり合わせる。
【結論】「電源」は、“住んだあと”の幸せを決める
家を建てるとき、ほとんどの人は「今の自分」にとって理想の間取りを描こうとします。でも、本当に必要なのは、“住んだあとの自分”の声を聞くこと。
その声は、「ここで何をしたい？」という問いかけから始まります。
延長コードに囲まれた暮らしを防ぐために。
無駄なストレスを未来に残さないために。
そして、あなたの暮らしをもっと快適にするために。
「電源設計は“見えない快適”の設計です。」
次の休日、展示場を訪れるなら、図面ではなく「あなたの動き」を基準にしてみてください。そこに、あなたの理想の暮らしが隠れています。
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