年末の“片づけラストボス”に挑む前に、先に倒しておくべき中ボスがいます。名前は距離と手順のムダ。ものが散らかるのは、あなたがズボラだからではなく、戻すまでが遠い/手数が多いから。改札のタッチ&ゴーが速いのは、ルールと導線が徹底的に単純だからですよね。家も同じ。
本稿では、収納を増やす前に「置き場所」と「動線」を再設計します。合言葉は「発生点のすぐそば」「回遊動線に回収口」「1アクションで終了」。玄関→リビング→キッチン→洗面→クローゼット→子ども&ワーク→廊下と、部屋ごとに実行スイッチを用意しました。年末の大掃除は“仕上げ”にして、日常は“勝手に片づく”ほうへ。

この記事を読めばわかること

  • 片づけが続く家の共通ルール(場所×動線×手数)
  • 玄関・リビング・キッチン・洗面・クローゼットの配置の定石
  • 1アクションで戻せるレイアウトと、回収ポイントの作り方
  • 「買い足す前に外す」チェックリストと、各セクションの年末ToDo

1|まず“OSアップデート”。量→場所×動線×手数へ

片づけは根性論ではなく設計です。ここだけ覚えれば、ほぼ勝てます。

  • 発生点半径1m:使う場所から腕一本+αの範囲に置く(リモコン・爪切り・ハンドクリーム・ハサミ等)。移動を前提にしない。
  • 回収ポイントを幹線に:家の回遊動線(玄関→廊下→リビング入り口など)に投げ入れOKの受け皿を置く。通り道が回収路。
  • 1アクション完結:開ける→入れる、で終わる。二重のフタ/高すぎる棚/深い引き出しは“戻らない装置”。
  • 高さルール:目〜胸=毎日、腰〜膝=週1、床下・天袋=季節物。頻度で高さを決める。
  • 30秒ドクトリン:戻すのに30秒超えたら定位置の敗北。距離か手数を削る。

年末ToDo(OS)

  1. 家の主要動線を手描き。回収ポイントを3箇所マーク。
  2. 散らかり常連の発生地点をメモ(例:郵便=玄関脇)。
  3. 1アクションになっていない収納はフタを外す/高さを下げる

2|玄関—ポスト→開封→仮置きが一直線

紙と小物は玄関で“湧く”。だから最短処理ラインを作る。

  • 開封デスク:トレイ2枚(要対応/保管)+ハサミ・印鑑を郵便受けから2歩以内
  • 24h仮置き:返送物・空き箱は床から浮いた棚で“翌日まで”の駐車場。面積を小さくして滞留を防止。
  • 土間フック:バッグ・上着の仮の定位置を作り、リビング汚染をブロック。
  • 鍵・小銭浅トレイで見える定位置。毎日のものは“隠さない”。

年末ToDo(玄関)

  • トレイ2枚と文具を投入口の最短距離に移設。
  • 空き箱用の浮かせ棚 or 台車を1台。
  • フックは身長別2段で無理なく届く高さに。

3|リビング—“出しっぱなしを設計”して、散らかりを無効化

ゼロにはならない。なら風景の一部にして、戻る速度を上げる。

  • 充電&リモコン陣:ソファ脇に浅トレイ+マルチ充電。ケーブルは見えないルートで床を空ける。
  • 読みかけ置き:テーブル下に薄バスケット週1“空にする日”をカレンダー固定。
  • 瞬間リセット口:リビング入口に「一気に集める箱」。掃除前・来客前はまずここへ集約→後で分別。
  • 素材と色は3系統まで。視界の情報量を減らすと“置いてあるのに整う”。

年末ToDo(リビング)

  • トレイ/バスケットの素材・色を統一
  • 充電は1拠点へ集約(床タップは撤去)。
  • 曜日札をトレイ裏に貼って“空デー”を習慣化。
green potted plant on white round table

4|キッチン&ダイニング—“1歩+1回”キッチン

料理は連続動作。振り向き1歩で届くかが勝敗。

  • 右手側の順番油→調味料→ツールを手前浅めに。重複ボトルは1軍だけ表へ。
  • ゴミ動線:作業台下に生ゴミポケット、背面に可燃/資源の二分踏まずに投げ入れできる距離。
  • 袋類:A4ファイルボックスで立てて取り出し1アクション
  • 備蓄:浅引き出し+見えるラベルで“手前から使う”。深い棚は在庫が冬眠する。

年末ToDo(キッチン)

  • 調味料の重複を棚前で仕分け。1軍以外は後列へ。
  • ゴミの二分ラインを足下に確定。
  • 紙袋は大中小3サイズだけ残し、残りは放出。

5|洗面・ランドリー—回収→洗う→干す→しまうを一直線化

洗濯が面倒なのはしまい先が遠いから。動線を直線に。

  • しまい先を通過点に:タオル・下着は洗面〜ファミクロの間へ。通るついでに戻せる位置。
  • 洗剤とケア用品:腰高引き出しへ。定量ボトルで詰め込みすぎ防止、残量の見える化。
  • 回収ボックス家族別/種別どちらでもOK。見た目より戻る導線を優先。
  • 一時掛けバー:洗濯機から腕を伸ばせる距離に。取り回し時間をショートカット。

年末ToDo(洗面)

  • 最短ルート図を矢印で作り、遠い定位置を移す。
  • タオルの1軍を洗面横へ、2軍は距離のある場所へ退避。
  • ボトルを残量見えるタイプに置換。

6|クローゼット・寝室—“掛ける標準化”と7割運用

畳むより掛けるほうが速い=戻る

  • ハンガー統一:厚み・滑り・色を揃える。摩擦を減らし迷いを消す
  • 7割収納:空白3割を死守。詰め込むほどシワ・滞留・放置が増える。
  • 季節ローテ箱+今週ワゴン:上段=“今季着ない”、手前=“今週の服”ワゴンで朝の判断を時短。
  • ベッド脇:耳栓・リップ・眼鏡・スマホは浅トレイへ。床置き習慣を物理で封鎖。

年末ToDo(寝室)

  • ハンガーを人数+10本で上限宣言(増やすなら1in1out)。
  • 1in1outルールを扉裏に掲示。
  • “今週の服”をワゴン化し、日曜に入替え。

7|子ども&ワーク—“途中で置ける”が最強

ランドセル・提出物・進行中の書類は途中置き場が命。

  • ランドセル定位置:帰宅→手洗い→置く、が直線になる壁付け棚。床から浮かせて掃除もラク。
  • 提出物トレイ:玄関〜リビングの視界に入る高さ
  • ワーク書類:進行中/保留/保管の3段ワゴン。移動できる=散らからない。
  • 子どもの高さ:肩〜胸ラインに“自分で戻せる”棚を。できない導線は親の残業

年末ToDo(子ども&ワーク)

  • 動線上に“置ける板”を1枚追加(棚受けでもOK)。
  • トレイへ大ラベル(誰の・何用)。
  • 3段ワゴンの停車位置を通路沿いに指定。

8|廊下・階段—通り道を“回収装置”に

通るたびに回収する仕組みで、ゴミの川下りを止める。

  • 返却ニッチ:壁面に浅いニッチで“借り物・返す物”の返却口
  • 階段下返却カゴ:2階へ持ち上げる物の一時集約
  • 掃除ツールは見える収納:通行の邪魔にならない高さに吊る。見えている=即着手。
  • 床面クリア:回収カゴは浮かせる or キャスター化で埃の温床を作らない。

年末ToDo(廊下)

  • ニッチ or フックを1つだけ追加して定位置化。
  • 返却カゴに週1の持ち上げ日を設定(当番制)。
  • 掃除ツールの吊り高さを家族でテスト。

9|“買い足す前に外す”チェック—摩擦源を除去

増やすほど遅くなる。まず戻しにくさの原因をカット。

  • フタと深引き出し:外す/浅くする。満たし切らない設計に。
  • 床置きカゴ浮かせる or ワゴン化。床掃除の摩擦ゼロへ。
  • 備蓄の分散一箇所集約+期限メモを扉裏。
  • 拭けない素材:見た目より掃除性を優先(拭ける・滑る・軽い)。

年末ToDo(撤去)

  • 開けにくい/戻しにくい収納を3つだけ解体。
  • 床置きカゴゼロデーを宣言。
  • 備蓄を一箇所統合→在庫表を掲示。

10|“家族合意を10分で”ミーティング台本(配布可)

片づけは共用ルール。10分で決め切る。

  1. 回収ポイントは3箇所(玄関脇/リビング入口/階段下)
  2. 1アクション以外の収納は廃止 or 改修
  3. “今週の服ワゴン”“空デー”の曜日を固定
  4. 1in1outと返却当番を決め、壁に貼る
    —終わったら、回収口とワゴンをその場で配置。議論より先に“置く”が正義。

まとめ

片づけは“気合の祭り”ではなく、毎日を軽くする設計です。

  • 発生点の半径1mに受け皿
  • 回遊動線に回収口
  • 1アクションで戻る仕組み

この3点を通せば、年末の大掃除は仕上げだけになります。今夜は家を一周し、回収ポイントを3つ作ってください。あとは、もののほうが勝手に帰宅します。