久しぶりの実家。こたつ、みかん、テレビの音量ちょい大きめ。せっかく帰ったなら、暮らしが今の親に合っているかを一緒にさらっと確認してみませんか。
大改修は不要。つまずき/温度差/夜の迷子/もしもの連絡――この4つを抑えるだけで、毎日の安心はぐっと底上げされます。
しかめっ面の“指導”はナシ。「実験してみよっか」のノリで、今日の5分/週末の30分に分けて、気まずくならずに進める手順を用意しました。餅を焼く片手間で十分。結果、家の空気が少しやさしくなります。
この記事を読めばわかること
- 転倒を減らす設計のコツ(段差・手すり・床・配線の扱い方)
- 温度差を小さくする冬運用(玄関・脱衣・浴室の「入れない/先に温める/面で温める」)
- 夜間動線を安全にする灯りとスイッチの整え方
- 通報・連絡の見える化(置き場所・連絡先カード・警報器の寿命チェック)
- その場でできる5分点検と次の帰省で足す30分アップデート
1|最初の10分は“いっしょに歩く”。玄関→廊下→リビング→キッチン→トイレ→洗面・浴室→寝室
点検は、図面よりいつもの歩幅が答えをくれます。親御さんのペースで次の3点だけチェックしましょう。
A. つまずきサイン:敷居・ラグのめくれ、延長コードの“渡り”、段差の鋭さ。
B. 暗がりサイン:夜に影が落ちる角、階段の始まりと終わり、遠いスイッチ。
C. ヒヤッとサイン:玄関の冷気、脱衣の底冷え、浴室に入る瞬間の冷え。
スマホで“ここ気になる”写真をサクッと撮影して、「今すぐ」/「週末」/「検討」の3つに仕分け。ここで8割、やることが決まります。
2|つまずきを削る:段差は“丸く”、手すりは“連続”、配線は“壁の線”
段差・敷居は丸くする
- ラグの端がめくれるなら薄手ラグに置換し、コーナー固定で端部を押さえる。
- 動線上の敷居は段差解消スロープで角を鈍く。たった数ミリの丸みが転倒リスクを下げます。
手すりは点ではなく“連続の線”に
- 階段/玄関上がり框/トイレ/浴室入口で“手が届くところに必ず何かある”状態へ。片側しかなければ反対側にも補助を。
- 置き型手すりや短いバーでもOK。左右どちらでも支えられることが大事。
床のすべりはケア剤で調整
- ツルッと滑る床は滑り止め対応クリーナー/メンテ剤へ切替。浴室入口はノンスリップマットを1枚。
配線は“床ゼロ・壁沿い”に
- 延長コードの“渡り”は巾木沿いへ移設、配線モールで“壁の一本線”に。
- ロボット掃除機がある家は床から15mm以上浮かせると巻き込みが消えます。
ワンポイント:「つかまる→踏み替える→引っかからない」が1歩の中に揃うと、転倒は目に見えて減ります。
3|温度差を丸くする:玄関・脱衣・浴室の“三手”
玄関=入れない
- ドア下はドアスイープ/すき間テープで冷気を遮断。
- 上がり框の室内側に厚手マット。一歩目の足裏温度が上がると体感がラク。
- 玄関ホールと居室の間に厚手カーテン or 上吊り引き戸で“風の直通”を止める。
脱衣=先に温める
- 入浴10分前に小型ヒーター弱運転。足元に向けるだけで十分。
- バスマットの下へ薄い断熱シートを忍ばせ、床の冷えを遮断。
- 入る前は換気扇OFF、出たらON。暖気は逃がさず、湿気は出していく。
浴室=面で温める
- 浴室暖房があれば5〜10分予熱。なければ床・壁へ温シャワーをサッと。
- 断熱フタで湯の熱を保持し、入る直前にフタを開けて浴室全体を温める。
- ノンスリップ+縦手すりで立ち座りを安定。入浴後30分換気で冷え戻りとカビを抑制。
4|夜の迷子をなくす:足元灯と“手元化スイッチ”
足元灯は点在・低照度・人感
- 寝室→トイレ→洗面のルート上に人感センサー付き足元灯を数カ所。まぶしくない“下向き・間接”が基本。
- 階段は踏み面が見える角度で小型ライト。始まりと終わりが分かれば、怖さが消えます。
スイッチは手の届く場所に移動
- ベッドから手が届く場所に常夜灯 or リモコン照明。遠いスイッチにはプルスイッチやワイヤレスを足して“手元化”。
目印は小さく光る
- 手すり端やスイッチ近くに蓄光シールをピンポイントで。“点”で導くと夜でも迷いません。

5|連絡と通報は“基地化”と“見える化”
電話とスマホの“基地”を作る
- 固定電話 or 受話器台はリビング出入口近くへ。スマホは定位置トレー+充電器を同じ場所に固定。
- 呼び出し音量・電池残量をまとめてチェック。
緊急連絡カードを一枚に
- 家族/かかりつけ/近隣の支援先を大きい字で1枚に。電話横 or 冷蔵庫に貼付。
- 薬・アレルギーのメモも同じ場所に集約すると救急時に有効。
警報器の寿命を確認
- 火災・ガス・CO警報器の設置年・電池をチェック。期限切れは交換を検討。
6|今日の5分点検/次の帰省の30分アップデート
今日の5分
- 動線上のラグ端のめくれを1か所だけ直す
- 寝室→トイレに乾電池式足元灯を仮置き
- 入浴10分前予熱を紙に書いて脱衣所へ貼る
- 緊急連絡カードを手書きで作り電話横へ
週末の30分(次の帰省で)
- 段差スロープ/ノンスリップマットを要所に追加
- 配線モールで延長コードを巾木沿いに移設(床ゼロ配線)
- 警報器の年式確認→必要なら交換
- 玄関の風除け(つっぱり+厚手カーテン)を仮設→1週間様子見
7|よくある“反論”シミュレーション
「今まで大丈夫だったから」
→ 今まで運よく“ハズれていた”だけ。段差の角が丸くなるだけでも、転倒確率は一気に下がります。
「明るすぎると寝られない」
→ 足元灯は“低照度+下向き”。まぶしさは出さず、足元だけ見えます。
「物が増えるのはイヤ」
→ 増やすのは“光る点”と“つかまる点”だけ。線(配線)は減らすので、全体ではスッキリします。
8|ミニ設計図:間取り別“すぐ効く配置換え”
8畳LDKの実家
- ダイニング→キッチン角に足元灯。
- テレビ裏の床渡り配線を撤去し、巾木沿いモールで一本化。
- 玄関ホールに仮カーテンで冷気の直通を遮断。
二階建て戸建て
- 階段上・下それぞれに蓄光目印+足元灯。
- 2階トイレ前の曲がり角へセンサーライトで影を消す。
- 脱衣所はヒーター+断熱マットの“5分予熱”を習慣化。
9|“言い方”は魔法:提案はぜんぶ“実験”にする
安全の話題ほど、上から目線に見えやすいのが難点。だから実験カードでいきましょう。
- 主語を自分に:「昨日、夜トイレ行くときちょっと怖かった。ここに小さい灯り置いてみていい?」
- 期限を切る:「1週間だけ試して、邪魔なら戻そう」
- 選択肢を渡す:「貼るタイプと置くタイプ、どっちがいいと思う?」
これだけで“押しつけ”が“共同研究”に変わります。
まとめ
帰省のたった一時間で、実家の毎日は静かにラクになります。
合言葉は「つまずかない」「冷えを先に消す」「夜に迷わない」「連絡先は一目で」。
今日は歩いて点検→5分で4つだけ整える。次の帰省で30分アップデートを重ねて、気づけば“転ばない・冷えない・迷わない家”に。
親の暮らしは、大工事じゃなく段取りで守れます。


